この傷は自宅の車庫から左側に出る際に、隣家のコンクリート製のプランターでこすってできた傷です。
左後輪前のサイドバンパー下部に7㎝ぐらいの目立つこすり傷と、サイドバンパー底面付近に4㎝ぐらいの傷があります。
自分の運転の仕方が未熟でつけた傷ではありますが、「公道に私物のプランターを置かないで欲しい」という気持ちも半分ぐらいあるので、なんとも言えない気持ちになります。
このページでは、サイドバンパーの傷をDIYで修理する方法・かかった費用について紹介します。
最初に修理後の写真をお見せします。
自分としては満足のいく仕上がりとなりました。
下地処理
車のバンパーやボディーの傷を修理する時に、最も大切な工程は下地処理です。
仕上がり品質の80%を決めると言ってよいです。
下地処理とは塗装する前に行う処理の全てを指します。
もう少し詳しく説明すると、傷のついた場所と傷の周囲との段差をなくしてツルツルな面に整えることや、塗装のはがれを防ぐための足付けを目的として行います。
下地処理の具体的な工程
・傷落とし用のやすりがけ
・(パテ塗り、パテ研磨)
・プラサフ塗装、プラサフ研磨
・足付け用のやすりがけ
これらの処理を行うことによって、物理的には塗装する面の凸凹を完全に無くし、塗装面を美しくすることができます。
逆にいうと、少しでも凸凹がある状態だと、どれだけきれいに塗装したとしても凸凹のある部分が目立ち、綺麗に仕上がりません。
また、化学的にはプラサフ塗装により、ボデーペンの塗料とバンパーとの密着性が高まり、日数が経過した時に塗装が剥がれるトラブルを防止できます。
下地処理を行う時の心理的なハードル
あなたがバンパーの修理を初めてDIYでやろうとした時、心理的なハードルが一番高いのが下地処理だと思います。
なぜかというと、「きれいな塗装面までやすり掛けして愛車を傷つける勇気」が必要だからです。
上の写真を見て頂くと、傷のついていない場所もやすり掛けした結果、白っぽくなっていることが分かると思います(これでも少し狭い範囲に留めています。プロの方たちはもっと広い範囲でやすり掛けして塗装すると思います。)
僕自身、最初の頃はタッチアップペイントで傷口だけを塗って簡単に補修を済ませていましたが、この方法ですと少し近くで見ればすぐに傷跡が分かってしまいます。
少しでも美しい仕上がりを追求したいのであれば、傷をつけた場所だけでなく周囲も含めて広い範囲で下地処理をすることをおすすめします。
やすりがけの前に
バンパーやボディーに傷をつけてしまった時に、最初に行う作業がやすりがけです。
実はやすりがけを行う前に行う、もっと大切な作業があります。
それは、傷口の状態を見たり触ったりして、よく観察する作業です。
ボディーペンのスプレーのやり方と異なり、下地処理は毎回やり方が変わります。
なぜなら、傷のつき方は毎回異なるからです。
キズの範囲や深さを入念に観察して、バンパー補修のおおまかな方針を決めるためにも、やすりがけを行う前に、傷口をよく観察することをおすすめします。
一見派手につけた傷のように見えても意外と浅かったり、見た目に比べて傷口が深かったりする場合もあります。
やすりがけの方針を決める時に考えること
・傷口の深さに合わせて、最初に使うサンドペーパーの番手を決める
傷口を指で触った時に、段差が分かるか分からないぐらいの浅い傷の場合は、320番から600番ぐらいのサンドペーパーを使います。
指で触った時に傷口の段差がはっきり分かる場合は、120番から240番ぐらいの粗い目のサンドペーパーから作業を開始して、徐々に細かい目にしていきます。
・どの範囲までやすりがけを行うかをきめる
やすりがけを行う範囲は、傷の深さで決まります。
傷が深ければ、その傷の周りをやすりで削って滑らかな面にするためには、広い範囲をやすりがけする必要があります。
傷が浅い場合は、それほど広い範囲を削らなくても良いです。
今回の傷は比較的浅めの傷ですので、やすりがけを行う範囲は狭くてOKでした。
上の写真で「傷をならすためにやすりで削った部分」は600番の耐水サンドペーパーで施工しています。
やすりがけのコツ
やすりがけは地味な作業ですので、早く終わらせたくなりますが、極力軽い力で丁寧に行うことが大切です。
ゴシゴシと力を入れてやすりがけすると、その場所だけが極端に削れてしまうので塗装した時に跡が残ってしまいます。
当て板(やすりがけ用のスポンジ)を使うと平滑な面を作りやすいのですが、狭い場所でスポンジが使えず指先だけでやすりがけをする場合は、特に軽めの力で行うことをおすすめします。
やすりの番手の選び方は「迷ったら一段階細かい目」にしておくとよいです。
実際にやすりがけを行う時は、やすりを一方向にだけ動かすのではなく、上下左右斜め方向にも動かして、やすりの目が残りにくいようにします。
どの番手からやすりがけをスタートしても、最終的には600番の目で研磨するところまで目を細かくしてやすりがけを行います。
(パテ塗り、パテ研磨)
バンパー修理の場合、原則パテ塗りは行わないことにしました(※)。
DIY初心者がパテ塗りを行うと、失敗する確率が高くなることを知ったからです。
パテは乾燥すると縮むため、施工後にヒビが入ったり、バンパーからパテが剥がれたりすることがあるためです。
バンパーに付いた傷なら、上で示したやすりがけを広範囲に行った後で、プラサフで表面を盛ることによって大抵の傷の修理に対応できます。
僕は過去に購入したバンパー用のパテをいろいろと持っていますが、使う機会がなくなりました。
(※)金属製のボディーについた傷が深い場合は、やすりがけには限界がありますのでパテを使います。
プラサフ塗装、プラサフ研磨
続いてプラサフ塗装です。上の写真はプラサフを塗布する前に行ったマスキングの状態です。
プラサフはプライマー・サーフェーサーの略で、やすりがけした部分の凸凹を埋める物理的な働きに加えて、バンパーと塗料との密着性を高める化学的な効果があります。
先ほどのやすりがけでは、バンパーを削っています(上の写真で薄いグレー色の部分)ので、ミクロン単位で考えると削った部分だけ凹んでいます。その場所を埋めるのがプラサフです。
プラサフはやすり掛けして削った部分よりも一回り大きな範囲を塗布します。
プラサフを塗布する前に、シリコンオフをスプレーして脱脂し、バンパーについている油分やシリコン成分を落とします。
プラサフ塗装1回目
全てのカースプレーに共通した使い方として、「1回目の塗布(スプレー)は軽め」に行うことがポイントです。
1回目はボディー表面とプラサフとの密着性がそれほど強くないためです。
少し物足りないぐらいの塗布量でOKです。
プラサフ塗装2回目
本日の外気温は20度ぐらいでしたので、乾燥時間を15分ほどとって2回目の塗布です。
2回目は少しだけ塗布する厚みを増やします。
塗布する厚みを増やしたい時は、スプレーを動かすスピードを少しだけゆっくりにします。
プラサフ塗装3回目
続いて3回目です。やすりがけした部分の境界線がまだうっすらと見えますので、結局4回プラサフを塗布することにしました。
昼間でもスマホのライトなどを車体に接近させて塗装面を照らすと、傷をプラサフで隠せているかを確認しやすくなります。
プラサフ塗装4回目(プラサフ完了)
この後、2時間ぐらい乾燥させればプラサフ研磨できるのですが、僕は一晩おいて次の日にプラサフ研磨を行うことにしました。
本日の作業はマスキングテープを外すところまでで完了です。
プラサフ研磨
プラサフ塗装後一晩乾燥させると、下の写真のような仕上がりになりました。
プラサフをスプレーしただけですと、マスキングテープとの境目に段差ができていますし、プラサフ表面もざらざらした感じとなっています。
そこで、プラサフ塗装した部分をサンドペーパーで磨いて、サイドバンパーとの段差が完全になくなるように研磨します。これをプラサフ研磨と言っています。
プラサフはサイドバンパーの素材に比べると柔らかいので、気合を入れてゴシゴシサンドペーパーで磨くと、磨きすぎてサイドバンパーの表面が露出しやすいので注意してください。
できるだけ磨く面の圧力を均等に分散させるために、下の写真のように当て板(サンドペーパー用のスポンジブロック)にサンドペーパーを巻いて優しく磨く方法をおすすめします。
上の写真のようにプラサフの境界部分(周辺部)から研磨していくと、プラサフを盛りたい中心部分を削りすぎるミスを防げます。
耐水サンドペーパーを使う場合は、水を付けてプラサフを洗い流しながら研磨していきます。こまめに表面を触って段差がなくなっているかを入念に確認します。
プラサフ研磨は下地処理の仕上げ工程と言ってよく、プラサフ研磨の段階で凸凹が残っていると、ほぼ100%の確率でボディスプレー塗装後も凸凹が見えることになって失敗につながります。
表面を指先で触って確認する時に、僕は目を閉じて触るようにしています。指先の感覚だけを頼りに全く段差が感じられない状態にツルツルになるまで丁寧に磨き上げていきます。
プラサフ研磨完了
プラサフ研磨は600番から磨き始めて、最終的に1000番で仕上げます。
指先の感覚を頼りに、全く段差がなくなる状態を目指します。
ボディー塗装
ここからが一番楽しい塗装工程です。
BMWの場合はソフト99のボデーペンの標準色が用意されていないので、近くのカー用品店に行って特注色を作ってもらいました。
色番号は416のブラックカーボンです。黒を基調とした色ですが、青のパールが混ざっています。
他のお客さんがいなかったこともあって、15分ぐらいで特注色ができあがりました。
プラサフの時と同じように、ボデーペンをスプレーする直前にシリコンオフをスプレーして脱脂します。
脱脂をしないと、油分やシリコン成分が付いている部分の塗料がはじき、何日か経過した後で塗装面が割れることがありますので、脱脂も大切な工程の一つです。
ボディー塗装(1回目)
ボディー塗装を行う前のちょっとした裏技ですが、地面に水をまいておくとホコリがたちにくくなり、塗装面にホコリが付くことを最小限に抑えられます。
プラサフの時と同様、ボディー塗装も1回目は軽めにスプレーします。
スプレーの前に缶を十分に振って缶の中身が偏らないようにします。僕は100回ぐらいは缶を振り続けてからスプレーしています。
ボディー塗装(2回目)
今日の気温は25度ぐらいでした。バンパー塗装を行うにはちょうど良い気温です。
乾燥時間を15分ぐらいにして2回目を上塗りします。
これが10度ぐらいの寒い日ですと、かなり作業がしにくくなります。
塗料の乾き方が悪く垂れやすくなることと、乾燥時間を長くとる必要があるからです。
2回目からは、色を乗せていく感じでスプレーします。
スプレー直後は上の写真のように、肌が荒れたような感じになりますが、溶剤分が揮発すると気にならないレベルに落ち着きますので、心配しなくても大丈夫です。
25度ぐらいの気温の時は15㎝ぐらいの距離からスプレーしています。
気温が下がるにしたがってバンパーとスプレーとの距離を離しています。
ボディー塗装(3回目)
3回目になると、かなり色が決まってきます。
ですがまだプラサフを塗装した部分が見えるので、15分後にもう一度スプレーすることにしました。
ボディー塗装(4回目)
これで、色付けは完了です。
今回はスプレー後に塗料が垂れることもなく、うまくできたと思います。
クリアー塗装(1回目)
続いてクリア塗装です。クリア塗装の役割は、光沢感を出すことです。
僕が今まで誤解していたのはクリアー塗装の量です。
クリア塗装が光沢感を出すことは分かっていたのですが、比較的補助的な役割の塗装だと思って軽くスプレーする程度にしていました。
実は全く逆で、クリアー塗装はボディーカラーの塗装と同じくらいにしっかり塗装する必要のある工程です。
クリアー塗装を行う範囲は、ボディーカラーのスプレー範囲よりも広いので、結果としてクリアーの使用量が一番多くなります。
クリア塗装(4回目)
今回のバンパー補修では、クリアも4回塗装することになりました。
上の写真の左端付近をよく見て頂くと、青色のマスキングテープが剥がれていますが、これは意図的にやっています。
クリアをスプレーする時に、すき間部分からクリアが入ることによって、塗装する部分としない部分との境界にグラデーションが入ってなじみやすくなるからです。
クリア塗装が完了したら、1~2分後ぐらいに、ぼかし材をスプレーして塗装面の境い目付近に付きやすいスプレーダスト(スプレーした後で残るざらざらした成分)を溶かします。
ぼかし材は溶剤成分が多いので、スプレーし過ぎると垂れてしまいます。
塗装の一番最後で塗料が垂れてしまうと精神的なショックが大きいので、吹きすぎないように注意しながらぼかし材を塗ります。
本日の作業はこれで終了です。
マスキングテープをはがして1週間程度乾燥させます。
次のページで、磨き上げ(研磨)の工程を紹介します。
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